Mag-log in「…ふわぁーーー…今日はなんだか疲れたなー。」
眠さで大きなあくびをするミーナ。 ロフィスの一件の後、グレンとミーナは町の外れにある綺麗な水辺の近くに寝泊まりすることにした。 「けどグレンの空間能力はすごいね。なんでも収納可能じゃん。」 テントや寝泊まりするために必要な道具はグレンの空間能力のポケットから引き出した。 「…そういや、エバルフさんが言ってた事ってほんとかな?」 ミーナはエバルフ達と別れる際に、エバルフからこんな事を聞いた。 昼間 ロフィスを倒した後、エバルフ達はグレン達の方に向かって一列に整列した。 「今回の件に関しては、紅の悪魔祓いの協力で獄魔の討伐に見事成功した。感謝する。それと、お嬢ちゃん。…ありがとう、君のおかげで騎士団の誇りを思い出せた。」 「全隊、礼!!」 そしてエバルフの号令でエバルフと部下達は全員揃って頭を下げた。 「俺を捕まえなくていいのか?ずっと狙ってたんだろ?」 「まさか、今日俺たちの命を守ってくれた恩人を捕まえるわけないだろう。…では、俺は今日の事を騎士団の団長に報告しなければならんからここで失礼する。」 エバルフ達は去ろうとしたがエバルフは最後に振り返ってからこう言った。 「一応言うが団長には気をつけろよ。あの方はお前みたいな強い奴と戦うのが好きだから会えば必ず戦いになる。そうなったら流石のお前も命はないぞ。」 それを最後に言い残し、部下を引き連れて去っていった。 「………命はないぞ…っていう事はグレンより強いのかな?」 悪魔を余裕で倒すグレンに勝つかもしれない人なんて相当強いに決まってる。 「だとしたらグレンとその団長は近づけてはいけないわ。…そういえばグレンは裏で何してるんだろ?」 ミーナはその事を伝えるためにテントの裏に顔を出してみた。 そこには何やら坐禅を組みながら目を瞑り、魔法書のような物を開いていた。 その周りを囲む様に黒い魔法陣が地面に展開され、そこでひたすら呪文のような物をブツブツと唱えていた。 ミーナはよく聞き取れないので気づかれないようにそーっと近づいて聞いた。 「(何だろう…?こんなに近くで聞いてるのに何言ってるのかさっぱり…)」 ミーナはここで邪魔するのもグレンに悪いと思ったのか終わるまでそばで待つ事にした。 おいっ、お前! 「ん?…今声が聞こえたような…」 探さなくていい!前見てみろ! 突然誰もいないはずなのに聞こえてきた声を探していたミーナはその声の言う通り目の前のグレンを見た。 しかし、グレンはずっとブツブツと呪文を唱えているので声をかけたのは他の人…。 でも誰が? (そうだ、俺はお前が見てるところにいる!) 「えっ?もしかして、グレンなの?」 しかし、グレンはこっちを見る事なくブツブツと呪文を唱えてるだけなのに声の発生源はグレンの方からだった。 (そうだ。俺はグレンの中からお前の心に話しかけてんだよ。) 「グレンの中から?…もしかして悪魔なの?」 (ああ、そうだ!確かこいつのもう一つの人格が言うてたろ?俺は契約によってこいつと共存してるってな。) その悪魔は姿は見えないがその不気味で低い声を聞けばどれだけ恐ろしい悪魔なのかミーナでも判断できた。 「…あなたが、グレンを悪魔祓いにした悪魔なの?」 (だったらなんだよ?大体俺がいなかったらこいつは死んでんだぜ?…そんなことよりもよ、今はこいつの邪魔しない方がいいぜ?) 「グレンは何してるの?」 ミーナが話しかけてもグレンは呪文をずっと唱え続けているがその中にいる悪魔は言った。 (こいつは今 魔導の扉(マジックゲート)に行ってる。) 「魔導の扉って何?」 (お前らでいう勉強みたいなもんだ。まだ習った事のない教科は勉強して身につけるだろ?こいつはああやってブツブツと呪文唱えることで魔法を習得する事が出来るんだよ。) 「へ、へぇー」 普段から勉強していないミーナはあまり共感出来なかったのか適当な返事を返した。 「勉強しなくても楽に魔法が手に入るなんていいなぁー。」 (あ?誰が楽に手に入るって言ったよ?魔導の扉は約30分で新しい魔法を習得出来るがその分デメリットもある。) 「デメリット?」 (ああ。あれはその30分間意識をある場所に持っていかなければならないからな。下手したらそのまま意識が戻らなくなる。) 「えぇ!!そんな危険なのこれって!?」 (うっせーな…デカイ声出すんじゃねーよ。だから意識を持ってかれないように呪文唱えてんだろ?) 「なるほど。ああやって集中を切らさないようにしてるのね?」 (そうだよ!…ったく…そろそろあいつが戻ってくるからあばよ!) そう言い残して悪魔の声は聞こえなくなり、呪文を唱えてたグレンは目を開けると魔法陣が消えていった。 目を開けるとそこにミーナがいたので気づいた。 「…なんだ、いたのか」 「うん、ちょっとね。その…何してたの?」 「なんでもいーだろ?…明日は朝早くに出発するから今日はもう寝ろ。」 ミーナに教えるのが面倒くさいのかミーナを押しのけてグレンはテントの中に戻っていった。 「何よ、ほんっと自分勝手ね!別に知ってるからどーでもいーもん!」 文句を言いながらミーナもテントの中に戻った。 一方、エバルフは今回の出来事を伝えるために騎士団に戻った。 石造りの建物の扉を開けるとそこには1人の女性が騎士団の鎧を身につけて立っていた。 「あら、帰って来たのね。12騎士長。」 その女性は鎧を身につけているが金髪で目の大きい美人な人だった。 「そういうお前は何してるんだ。10騎士長(テン・ナイツ)。」 「その呼び名はやめてちょうだい。2人っきりの時くらいカレンって呼んでちょうだい。」 「…お前、それ誰にでも言うんだな…。」 この騎士団は12人の強い騎士を○騎士長と呼ばせていて、強いものほど低い数字の騎士長と呼ばせていた。 しかし、カレンはそう呼ばれるのが嫌いだった。 なぜなら 「だって~、男には名前で呼んでもらいたいもんー!」 「ハァー…そんなんだからお前は20代後半になっても彼氏すら出来な……痛たただだだだ!!」 「今なんかいった~?」 「何も言ってませーん!言ってないから捻りながら俺の足を踏むなー!!」 笑顔のままエバルフの足を踏みつけるカレン。 そんな事をしてると誰か他の奴が帰って来たのか扉が開いた。 「おーい、帰ったぞー…って、何してんの?」 扉を開けたのはグレンと同じ10代後半でエバルフやカレンとは違う黒い服を纏い、腰には二刀の長剣をぶら下げていた。 一見少年に見えるその男にエバルフとカレンは姿勢を正して。 「「お、お疲れ様です!団長!!」」 そう、この男こそが大国イフリークの魔法騎士5000人を従える団長だった。 「そんな堅苦しいあいさつしなくていーよ。みんな俺より年上なんだしさ。」 「い、いくら私たちの年が上だとしてもあなたと私たちでは騎士としての位が違いますよ!」 「そ、そうです!俺みたいな一番位の低い12騎士長が団長に失礼な態度など取れるはずありません!」 「はは、そんな事ないよ!…で、2人は何こんな所で仲良く痴話喧嘩してるの?」 「「してません!!」」 団長にからかわれて2人は同時に声をあげて否定した。 そのあまりにも息がぴったりだったので団長はクスクスと笑った。 この国の魔法騎士団団長は先ほどからエバルフとカレンが言うように年は低くてもこの国で一番強い魔法騎士であり、5年も前から団長を務めていた。 身長は少し低めだが一見黒髪で幼い顔つきでパッと見ただけでは普通のカッコいい少年に見える。 しかし、その強さは歴代の中でもずば抜けていて言い表すとこの国の5000人の魔法騎士を1人で相手し倒せる程の力を持っていると言われている。 「えー、結構似合ってると思うんだけどな。お二人さん。」 「「似合ってません!」」 またまた息ぴったりのお二人さん。 「あはは!…まあ、それはさて置き…10騎士長は何してたの?」 「わ、私は少し任務に行ってたので疲れて休憩してました!」 カレンは団長にそう言うが目が違う方向に向いてたのでエバルフはこれは嘘だなっと心の中で思った。 団長も同じように思ってたのか。 「え、君が任務の後に疲れて休憩なんて珍しいね?」 っと疑いの目でカレンに聞いた。 「えっと…そ、そうなんですよ!日頃の疲れが溜まってたのかもうクッタクタで、あははは!」 カレンよ、分かり易すぎるぞそれは。 団長はハァっとため息をついて今度はエバルフの方を向いた。 「……まあ、いいや。12騎士長は今日何してたの?」 「俺は今日……悪魔を討伐しました。」 その一言で場の雰囲気が凍りついた。 「あ、あなたが悪魔討伐ぅ?全く、嘘つくならもうちょっとマシな嘘にしなさいよ!」 お前に言われたくねーよ! しかし、団長は真面目な顔になり。 「ほう、悪魔をね。確かに君の力ではまだ悪魔を倒すとこまでは無理なはず。到底1人では倒せないはずたが……もしかすると誰かの手を借りたのですか?」 「……はい。今回は、悪魔祓いの力を借りて倒しました。」 「あ、悪魔祓い!?あんたあった事あるの!?」 悪魔祓いに異常に反応するカレン。 「あぁ。それも長年俺が追いかけていた妹の仇と思ってた男だ。」 「仇だと…思ってた?」 「俺の妹を殺したのはその悪魔祓いではなく、俺の部下だったロフィス……いや、悪魔だ。」 「ロ、ロフィスが……あなたの妹さんを…」 エバルフの言葉にカレンは口に手を当てながらフルフルと震えていた。 しかし、団長だけは。 「……なるほど、あのロフィスが悪魔だったなんて気がつかなかったよ。それで、そのロフィスを倒した悪魔祓いは今どこに?」 「分かりません。しかし、あの男は私の命の恩人です。どうかあの男に戦いをいどむのはやめて下さい!」 エバルフは急に慌しく団長に戦いを避けるように言った。 その理由は。 「何故?…その悪魔祓いって強いんでしょ?だったら戦わないと損じゃないか。」 「損とかの問題ではなく、あの悪魔祓いは全属性の最上級魔法を使いこなせる異端な男です!そんなのとガチで戦えば私たち騎士団の部下やあなたもただでは…」 「12騎士長。君は何か勘違いしてないかい?」 すると団長は腰にぶら下げている二刀の剣を抜くと口角を吊り上げ笑いながら言った。 「ふふっ…俺はさ、ただ単純に強いやつとの戦いが好きなんだよ!騎士の使命とか関係なくね!悪魔祓いが異端?上等だよ!だったら俺の力でねじ伏せれば良いだけの話だ!」 そう、これがエバルフが戦いを避けた理由だった。 この団長は見かけとは裏腹に強さを求める戦闘狂であり、戦いになると場所に関係なく辺り一面を壊滅させるので最近は年を重ねるごとに報酬よりも町の被害額の方が多くなっていた。 こんな自由気ままな性格でも騎士としての才能や魔力は他の者に比べるとずば抜けてるので周りからは信頼されていた。 「けど、すぐには戦わないさ。今日は任務終わりで体が戦う気分じゃないし面倒くさいしね。とりあえず俺はシャワー浴びて寝るわ。えっと…12騎士長の報告はそれだけだよね?」 「あ、はい!それだけです。」 団長はそれだけ聞くと奥にあるシャワールームのある部屋に入った。 「ふぅー……全く、団長の戦い好きときたら逆に尊敬するぜ。」 「そうね。あの人は生まれながらの天才だから私たちとは考え方が違うのよね。…あ、そういえばあなたこれから暇?」 「え、いや。別に何もないが。」 「じゃあさ!今からちょっとコレの相手して~?」 カレンは腰にぶら下げている剣を指差して言うがカレンがこれを言うと別のことに聞こえる。 「なんで語尾にハートがついてんだよ気持ち悪い。別に良いけどよ。」 「気持ち悪いってひどっ!もう怒った!あなたがクタクタになっても止めないから覚悟しなさ~い!」 「ハァ…こいつ顔は良いんだけどなぁ。騎士団よりあっち系の仕事の方が向いてるんじゃないかな……」 そう言いながらもエバルフは表の広場に出てカレンの剣?の相手をするのだった。魔導砲・アステリアにより、火の海と化したノームの街。大都会の象徴であった何十階もある建物はその威力によって高い部分は消失した。燃えた瓦礫が辺りに散らばった地面は、平和な国から地獄の戦場へと一気に変えられる。上空の魔導戦艦はその変わり果てたノームを見下す様に宙に浮いていた。そして魔導戦艦から放たれた無数の戦闘機は地上に向かって急下降し、機関銃の様な物を地上に撃ち放つ。ズドドドドドドド!!!!機関銃の様な物から放たれるのは1発1発が魔力の籠ったエネルギー弾であり、地上に撃ち込まれた部分からは爆発が連鎖的に起きる。徹底的にこのノームを潰そうとしているのが分かる。小国など武力の低い国はこの攻撃で大半が機能不全に陥るだろう。しかし、この東の大国ノームは違う。魔力で動かす機械や医療など、他国よりも繊細な技術面が発展している先進国である。当然、軍事に関する機械も最先端の技術が搭載されているのだ。東の大国には風狼機巧工房(ふうろうきこうこうぼう)と呼ばれる、飛行艇や四輪駆動車を製造する機巧工房が存在する。(第31話参照)性能重視で機械が造られている東の大国が誇る技術の叡智(えいち)がこの場所に保管されている。その機巧工房から東の大国が造り出した戦闘機が上空へ飛び立ち、北の大国の戦闘機へ向かって行く。北の大国の戦闘機が100機を超える戦闘機に対し、東の大国側の戦闘機は40機程度。圧倒的に戦力の差は北の大国が上である。しかし、それはあくまで戦力差の話。最新の技術を搭載された戦闘機はその戦力差すらものともしなかった。東の大国の戦闘機はステルス機能が搭載されており、その機能によって戦闘機は透明化する事が可能。それにより、視覚的に見えなくなったところで東の大国側の戦闘機が反撃を開始する。エネルギー弾も北の大国の戦闘機とは違い自動(オート)で狙いを定める為、どれだけ戦闘機を速く操縦してても狙いがブレる事は無い。透明化した状態のまま自動で相手の狙いを確実に定め、一方的に攻撃を仕掛ける事で数の戦力差を埋める。これが、技術力の高い東の大国の戦闘機の力。数の量産は難しくも、その機能性は北の大国の戦闘機を遥かに上回っていた。視覚的に確認出来ず、例え戦闘機に乗った操縦士の魔力を感知したところで、気付いた時には既に撃ち落とされてしまうのだ。そして全ての北
一方、魔導戦艦を撃破した東の大国側は更なる北の大国の攻撃に備えて避難誘導が行われていた。次も都市部を襲撃してくるであろう北の大国の動向を予想し、国民達は総面積20㎢あるノーム王の城の城壁内へと誘導される。勿論全員を城壁内に誘導は出来ない。そこでグロードやネルが持つ空間移動の力で、子供を優先して他国へ転移させる事にした。行き先は西の大国イフリークと南の大国シルフ。両国は復興作業が順調に進んでおり、既に避難の受け入れが整っている状態であった。カイルはイフリークの騎士団に。そしてシルフの王の証を継承したフィナは大国に連絡した事によりスムーズに避難誘導が行えている。そしてカイルの両親と妹のレイアはグロードに空間転移でイフリークに転移させられる予定であった。「父上、母上。レイア。戦争が終わったら必ず迎えに行くから。」「うむ。カイル、無事を祈る…。」「カイル…絶対に生きて帰って来てね。」小さく返事するカイルの父親であるが、やはり心配なのか表情は暗かった。母親のカルラはやはり心配であり、涙を流しながら言った。そしてレイアはカイルに抱きついた。「…お兄ちゃん」強く抱きしめるレイアはカイルの胸に顔を埋める。「…大丈夫。大丈夫だから。」そんなレイアに優しく頭を撫でながらそう言うと、レイアはゆっくりとカイルから離れた。そして視線を後ろに居るミーナ、エミル、ライク、ニケルに向ける。「ミーナちゃん。エミルお姉ちゃん。」まずはミーナとエミルに向かって言う。「レイアちゃん。…また戻ったら一緒にお話ししよ!」両手を膝に付き、少ししゃがんだ姿勢のまま笑顔で言うミーナ。「そうね。レイアちゃんも、気をつけるのよ。」レイアの頭をポンポンと撫でてあげるエミル。「うん!またいっぱいお話ししよ!」そして今度はライクに向けて言った。「ライクお兄ちゃん!無茶な事は絶対にしないでね!」「…無茶な事しねーと勝てねえんだよ。」相変わらず、レイアに対してもぶっきらぼうに返事するライクであるがその返事に泣きそうになりながら。「だって、ライクお兄ちゃん1人で突撃して行きそうで怖いんだもん!」「わ、悪かった!ちゃんと気を付けるって!」泣きそうになるレイアを慌てて宥めるライク。そして最後にニケルに向いた。「ニケル様…。」「レイアちゃん…。」レイアとニケルはし
他国への軍事侵攻と併合を繰り返すことで領土を拡大している巨大な大国。ここは北の大国ウンディーネ。魔力資源と軍事拡張を国家存続の核とする極端な軍事国家であり、その統治思想は「戦果こそが存在価値」という歪んだ成果主義で統一されている。戦争で功績を挙げた者は地位・富・名誉を得る権利が与えられ、失敗者や非戦闘員には価値がほぼ与えられない。戦争で功績を挙げられなくとも、国家の軍事力拡大に繋がる軍資金を納めれば国から認められる。この仕組みを国民達に徹底させる為、この国では目に見える形で国民を上級、中級、下級という風に位置付け差別化した。どういう事か?その位置付けは国民の居住地域で分けられた。上級は名前の通り、貴族や戦争功労者など富裕層を指す。中級の国民は主に庶民の人達であるが、この者達は努力次第では軍に入隊し功績を上げる事で上級へと位を上げる事が出来る。そして下級は名前の通り、国の中でも最下層の人間の事を指す。大抵の下級国民が暮らす場所は政府の目に届かない場所に位置している為、治安が悪く劣悪な環境。ここには国に対する反逆行為を行った者、犯罪を行った者、北の大国の軍事侵攻により領土を奪われたその土地の人達が住んでいた。以前ライクとニケル、グロードが北の大国に訪れた際に出会った孤児の兄弟も下級国民であった。(第24話参照)下級国民は全てにおいて最底辺であり、人権というものは殆ど存在しない。これは領土を奪った他国の人間が自国に対して反撃しない為の抑止力にもなるが、それだけでは無い。先程説明した様に中級国民も犯罪や反逆行為を行う事で下級国民に成り下がる可能性があり、国民はそれを恐れていた。ーーこんな底辺の人間にはなりたく無い。こうして劣悪な環境の中で過ごす最底辺に自分もなる可能性がある事を知らしめる。それにより、国民全員に危機感を持たせながら国の為に必死で働かせられるのだ。また、人間とは自分より下を見て優越感に浸る生き物。自分達よりも底辺の人間が居る事により優越感に浸らせれば、国民のストレスの捌け口は自然と下級国民へと移る。この「働き蟻の法則」にも似た様な差別化の仕組みが、北の大国という巨大な軍事国家を成り立たせていた。「軍事の為に働かざる者、人としての権利を得るべからず。」北の大国にはその様な言葉が昔からあった。この国民の差別化。一見
魔導戦艦。それは北の大国が保有する、空中を駆ける全長200m、全幅80m、全高75mを誇る巨大飛行戦艦である。戦艦の全方位には大量の巨大な大砲が敷き詰められてある。それら全て、[魔導砲・アステリア]と呼ばれる以前グレンが魔導兵器であるレイクと戦った時に使用されていた大砲が搭載されている。(第36話参照)軍事大国である北の大国ウンディーネ軍の技術開発局が開発したこの戦艦。実は東の大国ノームにとって因縁のある存在であった。「魔導戦艦。我ら東の大国の技術を盗んでそれを軍事転用した巨大飛行戦艦か。」バンジョウの言う通り、この魔導戦艦は約100年前に東の大国が開発した魔力式四輪駆動車の技術を改良されて作られた。100年前、東の大国ノームにやってきた北の大国ウンディーネ出身の亡命者が居た。ウンディーネは諸国周辺の国に戦争を仕掛けては勝利して自国の領土を拡大していく軍事国家であり、戦争は絶対正義であるかの様に指導される。戦争、又は軍事に反対的な意見を持つ人間は処罰の対象となる為、それが嫌で亡命する北の大国の人間は当時珍しく無かった。ノームはそのウンディーネからやってきた亡命者に仕事を与え、彼は元々軍の整備士の仕事をしていた為、機械的な物を作る仕事を与えた。しかし、これは大きな間違いに繋がるのであった。数年後、その亡命者は突如ノームから居なくなり、その数年後にウンディーネ軍がノームに対して戦争を仕掛けてきた。当時ウンディーネの魔導戦艦が、ノームで作られていた魔力式四輪駆動車と全く同じ技術を使用して作られていた為、それに気付いたノームの国民は怒った。ーー亡命してきたあの男は、我々の技術を盗む為のウンディーネ軍が遣わせたスパイだったのだと。そして100年前、この事がきっかけで北と東の大国は規模は小さいが戦争に発展しており、戦争が終結してからその後4大国間同士で不可侵条約は結ばれているが未だ北と東の関係性は悪いままである。(第16話参照)今までは嫌がらせの様な北の大国のミサイルを東の大国近辺に放っていたが、今回の様な魔導戦艦で領空に入ってきた事は一度も無かった。明らかな領空侵犯(りょうくうしんぱん)であり、東の大国ノームに対する威圧行為だ。到底許される事では無い。「このままでは国民が危険だ!一刻も早く迎え撃つ準備を!」ギンジは八握剣(やつかのつるぎ)
カイルの影の斬撃によって舞い上がった黒い魔力が引いていく。「…ミーナちゃん!大丈夫か?」幾ら本気の勝負だとしても、あれだけの攻撃をまともに喰らえばただでは済まない。心配になったカイルはすぐに影の円展開を解除し、ミーナの方に駆け付けた。しかし、ミーナは何事も無く立っていた。「…あれ?私、確かにカイル君の攻撃を喰らった筈だけど?」傷一つ付いていないミーナは自分自身でも何が起きたのか分かっていない表情をしていた。するとバンジョウが終了の合図と一緒にその理由を説明した。「勝負あり!カイル殿の勝ち!…2人とも、中々凄い戦いだった。」「この道場は今日だけ特別な"結界"を張ってるんだ。安全にテストが出来るように、[この中では如何なる理由があっても他者を殺す事が出来ない]という条件を付け加えて。」「結界?」初めて聞く用語に首を傾げるミーナ。するとグロードがバンジョウに聞いた。「結界術を扱えるのですか?」結界術。それは魔法とは違い、魔力では無く条件を成立させる事により一定範囲の空間に結界を張る術である。「ええ。まあ我は簡単な結界術しか扱えないですけど。条件が厳しくなるとそれだけ術者に掛かるリスクも高くなるから。」リスク。それを聞いてグロードは少し疑問に思った。もしかすると、ベリエルが使った呪いというのはこの結界術がベースなのかと。しかし確証がない為、思っていても皆んなには言わなかった。「では、気を取り直して。今度は…」バンジョウは他の人のテストを行う為に仕切り直そうとするが、その時であった。バンジョウの腕に付けていた腕時計から大きな音が鳴り始める。ピリリリリリリリ!!!あまりにもうるさい音にびっくりするカイル達であるが、八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーだけは全員緊張感のある顔になっていた。何故ならこの音は彼らにとっての緊急事態を意味するからだ。バンジョウは腕時計に付いてるボタンを押してその音を止めると、腕時計のレンズから人の姿が現れる。「こちらスイゲツ!た、大変です!バンジョウさん!」ホログラムで映し出された人物は今日はこの場に来ていなかったスイゲツであった。声の感じからして物凄く慌てているのが分かる。「どうしたんだ、スイゲツ?何故緊急連絡用の通信に繋いだ?」バンジョウとその他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーは、慌て
エミルとフィナが道場に到着した午前8時頃。実はグロードも既に道場に到着していたのだ。それは丁度ネルが作った修行空間からカイル達が戻ってきた後、ボロボロの姿になったカイルを見てエミルがネルにキレていた時だった。「お前ぇ!!…カイルに、何をした!!」怒鳴り声は外までよく聞こえてきた為、到着したグロードは止めようと思ったのだが、カイルがエミルを制止した。カイルは事の顛末を後から来たエミルとフィナに説明した。「(成程。ネルはカイル君達に修行を付けてただけなのか。)」外で聞いていたグロードはカイルの説明を聞いて状況を理解した。「(……さて。どのタイミングで入ろうか。)」カイルの説明を聞いていたせいで、道場に入るタイミングを完全に逃してしまう。グロードは取り敢えず気にせずに入ろうと思ったのだが。「何であいつの事そんな簡単に信用するの!?あいつがフィナさんの国でどんな事したのか、カイルは知ってるんでしょ?」再びエミルの声が聞こえてきた為、またまたタイミングを逃してしまう。カイルとエミルはしょっちゅう喧嘩はしてるものの、それは痴話喧嘩に近い感じだ。しかし、今回は違う。エミルは泣きながらカイルに訴えかけていた。そして口論はヒートアップし、捲し立てるエミルに対してカイルが言った。「エミルだってネルの事何も知らないだろ!!」カイルの声にエミルは喋るのをピタリと止めた。そしてカイルは続けて言った。「確かにネルはシルフを壊滅寸前まで追い込んだ。殺した人も星の数だろう。到底世間にも、フィナさんやライクとニケルにも許されないと思う。」「でも、それはエミルも一緒だっただろ?現に元盗賊だったせいでイフリークの騎士団には最初認めてもらえなかった。盗賊なんて、世間から見れば悪人なんだからな。」「な!…違う!私は…」カイルの発言に動揺するエミルだが、ヒートアップしたカイルは喋るのを止めない。「違わない!エミルは自分がされた事と同じ事をネルに言ってるんだ!エミルだけじゃ無い!この場に居る全員、立場が変われば被害者と加害者なんだよ!」「だから皆んな。どっちかがずっと被害者面ばかりするなよ。俺達が偉そうにネルだけを非難する資格なんて、無いんだよ。」カイルの言葉によって道場の中の空気が一気に変わったのがグロードにも分かった。「(カイル君…それは正しい事だが、今
魔力を貯めていた悪魔の手が突然刃物で斬られたように落ちた。 「なにっ?」 すると今度は周囲にいた悪魔達がバタバタと倒れていき、悪魔の心臓部分には深い切り傷があった。 「まさかっ、俺以外の悪魔がほとんど全滅だと!?」 騎士達はいきなりの悪魔の全滅に戸惑ったがそれが誰の仕業かすぐに分かった。 「これは、もしかして…」 「ああ、間違いない。この魔力は、この魔力は我ら騎士団最年少で最強の方、団長 だ!」 この国の団長は歴代初の10代の団長だが他の国ではこういう噂を聞く。 イフリークの騎士団団長の実力はは数で表すと国の騎士5000人の強さに等しく、 戦場では自分は無傷
南地区 黒いヒビ割れの悪魔が言った通り、この地区にも悪魔がいた。 その中でも黒いスーツを着たスマートな体型の悪魔は騎士団の攻撃を喰らっても倒れることはなく、街を容赦なく破壊していく。 「くそっ!もっと魔砲弾を撃てー!」 「だめです!もう弾が残り少ない!」 「くそっ!こんな時に12騎士長の1から9長は他の国に出張とは…エバルフとカレンはまだ戻ってこないのか!?」 「それが…未だに連絡が取れません!」 「くそっ!仕方がない!俺がやってやる!」 先陣を切って前に出たのはエバルフとカレンと同じ称号を持つ男。 11騎士長(イレブン・ナイツ) サージス・デルモンテ
宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。 重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。 笑いながらミーナに声をかけた。 「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」 「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」 「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」 「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」 「私?私は……」 「おーい、カレーン!」 カレンが答えようとした時
あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。 この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報







